5/1/15

すてきなあなたに


懐かしいかたちの文字列に、
はっとして思わず手に取りました。

『すてきなあなたに』は
暮らしの手帖に1969年から連載されている
大橋鎮子さんの掌エッセイです。

もともと好きで、
函入りの本も持っているのですが、
ちいさな話を大きな本で読むのが
なんだか億劫で
本棚に仕舞われたままでした。

このたびポケット版が刊行されたようで
小さく凛とした佇まいで
『すてきなあなたに』の、
少し踊っているようなタイトルが
本屋の棚に並んでいました。

早速買って、出勤時にランチタイムにと
読んでいます。



久しぶりに読んでみると
日本語の美しいこと…
日本の「正しい」礼儀正しさの美しいこと…
それがまぶしくてまぶしくて
思わず涙が出てきました。

今現在、普段にはとても使われない言い回しが多いですが、
なんだかそれが妙に温かくて、
愛する人達と暖炉の前に集まっているような
陽だまりの中で風と鳥の声を聴いているような
言いようも無い安心感に包まれました。

本の内容は
日常で起きた少し嬉しいこと
面白い発見
教えてあげたいレシピ
最近のお気に入り
ふと思い出される記憶
戻らない時間
その中にあった幸せの色…

ともすれば見過ごしてしまいそうな
本当にちいさな幸せを
ちいさな哀しみを
ちいさな感動を
丁寧にそっと拾い上げて
テーブルの上へ載せ
タイトルが書かれ
さんかくに折られた紙を
やはりそっと置いたもの。
それが、大橋さんのエッセイです。

時折、こういったものに出会います。
「こういったもの」とは
私を調律してくれるものです。

日々、大量の情報と時流に押し流されて
気がつくと何が自分らしさなのかを
すっかり見失ってしまうことがあります。
自分らしさとかアイデンティティとか
そんなことに拘ること自体が
ナンセンスだと思うことも勿論あります。
だって人は変わってゆくものですし
変化こそが成長そのものなのですから。

それでも、どんなに成長して行って
「今の自分が一番すき」
と言える時でも
触れてみたとたんに、自分の中へ
とてつもない勢いで流れ込んで来るものがあります。
それが私を「調律してくれるもの」です。

それらはきれいな水のようで
私の心の大地を瞬時に潤していきます。
潤って初めて、乾いていたことに気付くのです。
その時私は
「ああ、忘れていた、私のとても大切なもの」
と気付き、涙が出ます。
そういうものは
どうして忘れていたんだろう?
と不思議なくらい、私にとって大切なものです。

この本が調律してくれる弦は
私の愛する「うつくしいにほんご」と
「礼儀が本来持っているうつくしさ」
それからまだまだあります。
今わたしの心は喜びにふるふると震えていて
魂が喜んでいるのがわかります。


仕事を終えると、気持ちの良い夜風。
呑み会を断り
ひとり檸檬ビールを片手に
ビルの屋上でつづきを読みます。



本当に好きなことをしてたら
思いがけない人から連絡が来ました。

突然の予定変更。
今私が大切にしたい人に
うきうきと会いにいきました。

こんな素直な気持ちになれたのも
大橋さんがこう呼びかけてくれたおかげ。
「すてきなあなたに」


読んで下さってありがとう♪(*・ω・人・ω・*)

あづさ

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